SNSのDMで相手の許可を得ずにわいせつな画像を送り付ける「チン凸(ちんとつ)」。多くの人が理解に苦しむ行為ですが、中には快感を得ている人もいるかもしれません。
しかしチン凸は刑事上の罰則や、ネットで炎上のリスクもある危険な行為です。
今回はチン凸のリスクを踏まえ、なぜしてしまうのかといった心理についても解説します。
チン凸(ちんとつ)とは?
チン凸(ちんとつ)とは、男性器を撮影し、他人に送り付ける迷惑行為を指します。もともと海外で流行した嫌がらせ行為であり、欧米では社会問題に。近年では日本でも蔓延しています。
これはインスタグラムやXが普及し、誰でも気軽に他人へDMが送れるようになったのが原因。特に裏垢女子やアイドル・コスプレイヤー・声優・YouTuberをはじめとしたインフルエンサーへの被害が拡大しています。
2023年には有名インフルエンサーの「あみち。」さんがYouTubeで被害を訴え、ニュースになったことも(※1)。
また女性だけでなく、男性に送り付けるケースも起こっており、海外ではゲームの開発スタッフに宛てたチン凸も多発しています。
なお女性器の画像を送り付けるケースは「マン凸」と呼び、少数ながら被害を受けたケースも。どちらにせよ犯罪行為となるため、冗談半分でも行ってはいけません。
参考※1:弁護士ドットコム|局部の写真を送りつける「ちん凸」、有名インフルエンサーも被害に 法的には?
チン凸の手口とは?
チン凸の手口はネット上でターゲットのアカウントを探し、自身の局部を撮影した画像をDMなどで送り付けるもの。
InstagramやXでは誰でも簡単に相手とコンタクトが取れますからね。
それを悪用し、相手に卑猥な画像を送りつけるのです。もちろんチン凸をされた相手の反応を確認することはできませんが、それを想像して楽しむのが主な目的といわれています。
AirDrop痴漢とは?
また、チン凸と似たものにiPhoneの機能を悪用した「AirDrop痴漢」と呼ばれるものがあります。なお2019年8月には、福岡県でAirDrop痴漢が初めて摘発され、ニュースとなったことも(※2)。
AirDropは、apple上のデバイス同士なら画像ファイルや動画などを送り合える機能です。これを使い、局部の写真を無差別に送り付ける行為を指します。
以下は女子高生が被害に遭った実例です。ある日、女子高生が学校に向かうため電車に乗っていました。
その際、スマホ画面に「○○が1枚の写真を共有しようとしています」といったメッセージとともに、男性の局部の写った卑猥な画像が送られてきたのです!
女子高生は突然の出来事にパニックとなり、「辞退」ボタンをタップ。AirDropでは辞退を選ぶと端末に送信された証拠は残りません。
そのため警察に被害届を出すこともできないのです。このような手口は「サイバー露出」「見えない痴漢」とも呼ばれています。AirDropでは、見知らぬ人物から画像が送られてきても拒否が可能です。
しかしその際、レビュー画面が表示されるため、見たくもない画像が見えてしまう仕組みです。チン凸画像のほか、ホラー画像がいたずら目的で送られるケースもあり、被害は拡大しています。
参考※2:iPhone Mania|AirDrop痴漢”の容疑で37歳の男を書類送検
チン凸をしてしまったらどうなる?
チン凸は犯罪に該当する行為であり、冗談でもやってはいけません。ここではチン凸を行ってしまうとどうなるのかについて見ていきましょう。
わいせつ電磁的記録頒布罪に該当する
チン凸で局部の卑猥な画像を送り付ける行為は「わいせつ電磁的記録頒布罪(刑法175条 1項」に該当します。
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする
e-Gov法令検索より引用
わいせつ電磁的記録頒布罪は2年以下の懲役もしくは、250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役刑+罰金が科せられます。
他にもXで局部をポストする行為も同様です。Xでの書き込みは、不特定多数が見るのが前提となります。
そのため局部画像を流してしまうと、わいせつ電磁的記録頒布罪になる可能性が高いです。また局部が写った画像を見つけても、面白半分でリポストするのはNG。
リポストすると、不愉快な画像を拡散してしまい、さらに大勢の目に触れる事態を引き起こします。リポストも同罪となるケースがあるため、注意しましょう。
デジタルタトゥーとして残ってしまう
チン凸画像は、本人は遊びのつもりでも、一度ネット上に流出すると削除はほぼ不可能です。もしチン凸画像に個人情報を特定できるような情報が写り込んでいた場合は、身バレの危険性もあるでしょう。
「画像だけで本人の特定はできないのでは?」と思うかもしれませんね。しかしネット上にわいせつ画像が出回れば、最初に投稿したアカウントを探すのは難しいことではありません。
アカウントが特定されれば、過去のポストから個人情報が特定される可能性もありえます。もちろん被害者が警察に通報し、捜査が始まれば、アカウントから本人特定は時間の問題でしょう。
自分では「その場限りの遊びのつもり」だったとしても、のちのトラブルに繋がる可能性はゼロではありません。嫌がらせ目的で卑猥な画像を送る行為は、犯罪です。決して行わないようにしましょう。
ネットで晒される可能性がある
自身で流出させたチン凸画像が、プライバシーと共にネットで晒される可能性があります。晒される場所はSNSに限らず、ブログや掲示板・YouTubeなどが考えられるでしょう。
わいせつ画像の流出は犯罪行為のためネットで叩かれやすく、痛烈な批判を受ける可能性もあります。また個人情報が特定されてしまった場合、日常生活に支障をきたすかもしれません。
不特定多数に画像を送る以上、個人のスマホやパソコンに保存されてしまったら、削除はほぼ不可能です。
YouTubeやSNSにはネット上の犯罪行為を晒したり、個人情報を暴露するアカウントも存在します。炎上を避けるためにも、見知らぬ相手にわいせつ画像を送るのはやめるべきです。
アカウント凍結の可能性がある
悪質なチン凸を行った場合、運営にアカウントの停止や凍結といった対応をされる可能性も。
アカウントが永久凍結されてしまった場合、違反者は新しいアカウントを作成できません。SNSでは有害な画像を規制するため、厳しいチェックが行われています。
未成年でもチン凸すると補導対象に!
未成年がチン凸をした場合も、犯罪となるケースがあります。写真を送った人物が18歳未満の場合、児童ポルノ提供罪(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 7条)に該当し、3年以下の懲役もしくは、300万円以下の罰金が科せられることも。
本来児童ポルノは子どもを保護する法律ですが、行為自体が免除となるわけではありません。そのため児童自身が検挙・補導されるケースもあります。
送り付けた相手が1人でもチン凸は犯罪になる?
わいせつ電磁的記録頒布罪の「頒布」とは、「不特定または大勢の人に対して交付・譲渡する行為」を指します。
そのため「1人に送っただけなら、罪にならないのでは?」と考えるかもしれません。しかし実際は異なります。
過去には「たまたま1人のみが受け取ったとしても、不特定もしくは多数の人に対して交付や譲渡をする意思があれば、頒布に該当する」といった判例が出ているためです。
特定の1人のみに送ったとしても、頒布の「疑い」で逮捕される可能性はゼロではありません。
なお他人の局部画像を公開した場合「リベンジポルノ法違反」と別の犯罪に該当してしまうケースもあります。わいせつ画像の取り扱いには、十分な注意が必要です。
チン凸をしてしまう理由は?
チン凸は犯罪ですが、未だになくなりません。SNSで「#チン凸」と検索すると、関連する書き込みがたくさん出てきます。なぜチン凸はなくならないのでしょうか。ここでは理由について考えてみましょう。
性的欲求を満たすため
多くのチン凸は、性的欲求や承認欲求を満たすために行われます。相手の反応を確認する、もしくは想像することで、自身の欲望を解消しようとするわけです。
また一部では女性へのアプローチのためにチン凸をする人もいます。チン凸によって自分の存在を相手に知らしめ、興味を持ってもらうよう仕向けるのです。
痴漢目的
チン凸はほとんどの場合、痴漢目的で行われます。一般的に痴漢は、相手に触る行為です。しかしバレると捕まるリスクがあり、自身の身に被害が及びます。
それらを避けるため、代わりに女性へ卑猥な画像を送り付けるのです。「触らないから問題ない」といった考えを持っているのかもしれません。もちろんどちらも犯罪です。
露出狂
自身の性器を公にし、快感を得る「露出狂」の趣味を持っている人も僅かながら存在します。見られることに快感を覚える性癖のため、女性にチン凸をしてしまっている可能性があるでしょう。
もしくは直接見せると捕まるリスクがあるため、画面越しに見せることで安全圏にいると勘違いしているタイプです。
ネット上のやり取りとはいえ、警察の捜査が入れば身元はバレます。自ら証拠を残してしまう行為ともいえるでしょう。
趣味趣向の歪み
性的な思考に歪みがあり、チン凸がやめられないパターンです。もしくは溜まった性的なうっぷんをチン凸で解消しているのかもしれません。
趣味趣向や性癖の歪みは簡単には治らないものです。そのため自分でもチン凸に関する欲求をコントロールできなくなっているのかもしれません。
相手が喜ぶと勘違いしている
例えば「自分は女性器の画像が送られてきたら嬉しいから、相手も男性器の画像で喜ぶはず」といった考えを持っている場合が挙げられます。
自身の価値観を一方的に押し付ける「認知バイアス」の一種が理由と考えられるでしょう。異性経験が少ない人に多くみられる症状でもあります。
チン凸の被害に遭ったときの対処法
ここでは、もしチン凸の被害に遭ってしまったら、どのような対応をすればよいかについて解説します。
無視をする
チン凸をする人間は、相手に対して何らかの反応を求めている可能性が高いです。そのため被害に遭ったら無視しましょう。
削除をするのみでは、「見てもらえている」と思われ、また送られてくる可能性があります。また面白がって周りに見せびらかすのも、よくありません。淡々と無視をするのが最適な方法です。
相手のアカウントをブロックする
相手のアカウントをブロックしてしまえば、連絡が来ることはありません。
他にもXやインスタグラムでは、アカウントを制限する機能があり、相互フォローしていないとDMの送付ができない設定もあります。事前に設定しておけば、不愉快なチン凸の大半は防げるでしょう。
警察に相談する
悪質なチン凸が続く場合、警察や弁護士に相談してみるとよいでしょう。その際は実際の画像や相手のアカウントが分かるようにしておくとなおよいです。
チン凸は犯罪行為!遊び半分でも絶対にやらないで!
局部の画像を送り付けるチン凸は、わいせつ電磁的記録頒布罪に該当する犯罪行為です。
実際に逮捕者も出ているため、慎しみましょう。チン凸以外の方法で、発散できる方法はないかと考えてみてくださいね。